Ⅲ.読解

次の文章を読んで後の問いに答えなさい。

大学生にとって大変なのは、やはり最高学年の4年生。年明けすぐせまった卒業研究の仕上げに追われながら、まだ就職が決まらない人はその心配もしなくてはならない。最近では、大学生の就職活動がどんどん早まっており、中には3年生のうちに就職が決まってしまう人もいる。そんな中、4年生の12月に就職活動なんて、あまりに遅すぎる気がして学生に聞いたら、‘いや、それが違うんですよ’とおもしろい話を教えてくれた。

3年生の秋や春に早々と就職先が決まってしまった学生は、それから卒業までの間、何回かその企業に研修にでかける。企業としてはそうやって会社や仕事に慣れてもらって、‘( イ )’という気分を高めてもらおう、と考えるのだろう。

ところが、学生の中には、企業の研修に行くうちに逆に‘ここで働くのいやだな’という気分になるらしい。‘先輩たち、なんだかこわそう。私なんか、毎日、怒られそうだな’‘えー、会社ってこんなに真剣に仕事しなきゃならないんだ。とてもできないや。’だんだん働くことが恐怖に思えてきて、自信もなくなる。そして4年生の秋くらいになってから‘やっぱりここで働くの、やめさせてもらいます。’と言って辞退してしまう学生も少なくないらしい。‘だから秋になってから欠員を補充するために再募集する企業も結構あるんです。そういうところは、とにかく急いで決めなければならないから、入社試験もちょっといい加減だったりして。正式な募集のときより、ずっと入りやすいんですよ’。

そう話してくれた学生は、最近になって一流ホテルに就職が決まった。それもやはり辞退者が出た後の再募集で合格したそうだ。

そうやってめでたくギリギリになってから就職が決まる学生がいるのは嬉しいが、それにしても本格的に働く前から‘仕事するのがいやになってきました’と辞退してしまう学生がいるとは、情けない。せめてしばらくやってみてから‘やっぱり自分には向いてない’と決めるならわかるのだが……。新しいことが近づくと、期待とともにだんだん不安や恐怖も大きくなるのは、人間の心理として当然のこと。でも、やってみたら、意外に楽しかったという場合がほとんどのはず。‘案ずるよりは産むがやすし’ということわざにもあるが、よほど危ないことでないかぎり、まずやってみてそれから考えようと私は言いたい。

質問

(1)‘いや、それが違うんですよ’とはどういう意味か。

a.遅い時期に行われる募集は欠員補充のため、早い時期よりむしろ入社しやすい。

b.就職が決まるのが早すぎると返って就職したくなくなる。

c.今大学生が就職活動をする時期はだんだん遅くなっている。

d.早く就職が決まると研修に行かなければならないので、ギリギリになって就職を決めたほうがよい。


(2)(イ)にあてはまる適当な言葉を選びなさい。

a.はやく就職先を決めよう

b.がんばって卒業しよう

c.私はここでがんばるぞ

d.残りの学生生活を楽しもう


(3)本文の内容に合うものを選びなさい。

a.研修期間に会社や仕事に慣れて就職するという気分を高めておくべきだ。

b.就職する前から仕事がいやになってしまうのは人間の心理として当然だ。

c.何事もまずは挑戦してみることが大切だ。

d.ぎりぎりになって就職が決まる学生もいるからあきらめるな。